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地域活動

三大疾病に特化した医療を提供

2018.07.29

札幌禎心会病院 德田禎久理事長へのインタビュー

チームで挑む がん治療最前線

健康寿命を延ばしていくのが我々の使命です。
3大疾病(がん、脳卒中、心臓病)に加え、未病の段階にも
しっかり取り組んでこの使命を全うし、地域に貢献していきます。

診療時間:9:00~12:00 13:00~17:00土曜AMのみ
住  所:札幌市東区北三十三条東1丁目3-1

Q1. 最近のがん診療に係る話題は何ですか?

明るい話題は、がん治療で新しい取り組みが始まったことです。
これまでがんの3大治療は、手術・薬物治療(抗がん剤治療)・放射線治療でしたが、最近では第4の治療法として免疫治療が脚光を浴びております。
これまでの治療でも、手術ではより体の負担が少ない内視鏡や胸腔鏡・腹腔鏡、さらにはロボットを利用するなど進化していますし、薬物治療も、個々人のがんの遺伝子・分子の特徴を調べて、より効果的かつ副作用の少ない薬を選択するようになってきております。
日本におけるがん治療の大きな問題は、放射線治療の割合が少ないことで、欧米の半分でしかありません。「体に優しい手術にも負けない治療法」ですので、がんと言わたら必ず放射線治療の出来る施設で相談を受けてください。 最近では、陽子線というこれまでのX線ではなく粒子線を使った治療が普及しつつあります。(全国12施設)周囲の正常組織への影響がほとんどなく効果的にがんをたたく素晴らしい治療法です。
これまでの免疫療法は、免疫を活性化するものでしたが、最新のものは、がん細胞を攻撃するリンパ球にブレーキをかける分子の働きを阻害(免疫抑制を阻害)するものです。  よく効く患者さんは10-15%とされますが、抗がん剤で効果がない場合でも効く方がおり、保険適用が広がっております。
課題もありまして、がん検診受診率が向上しないことです。国民生活基礎調査(2016年)によるがん検診受診率(40歳以上)は、残念ながらまだまだ低く、男性より女性がより低いことも問題です。 北海道は、いずれも全国都道府県の下位10位以下となっており、関係者の努力が望まれます。
がんは、国民の2人に一人が罹患し、がんにより3人に一人が死亡します。がん治療の最も重要なポイントは早期発見早期治療で、早期がんはほぼ100%治りますので個々人が検診の重要性を意識すると同時に、各企業が積極的に取り組むべき課題です。


Q2. 陽子線治療の特徴についてお話いただけますか?

まず、放射線治療では2つの事が出来ることを知ってください。一つはがんを殺して治すこと(根治的治療)、もう一つは痛みや運動障害や呼吸・嚥下障害をなくする、また手術をやりやすくするために予め照射する(緩和的治療)ことです。
これまでのX線による治療の最大の問題は、放射線が組織を突き抜けるので色々工夫をしてきたもののがん以外のところにも多少は放射線がかかることでしたが、陽子線治療は一定のところで止まる放射線なので周囲の正常組織への影響はほぼないといってもよい優れものなのです。そこで、正常組織が弱く放射線の影響を受けやすい小児で、まず保険でがん治療が出来るようになりました。がんが存在する深部で放射線が止まってエネルギーを最大に放出する「ブラッグピーク」という現象が起こる。  陽子線治療が特に得意なのが、小児がん、頭頚部がん、肺がん、食道がん、肝・胆・膵臓がん、前立腺がん、骨軟部腫瘍です。4月から小児がん・骨軟部腫瘍に加え、前立腺がん、頭頚部がんに保険が適用されることになりました。
我々の施設には、現時点で札幌に一台しかない世界最高のX線治療器もありますので、がんの診断をうけた場合「体に優しい放射線治療」の話を聞きに来ていただきたいと思います。(がん相談窓口 月~金  がんセカンドオピニオン外来担当:今井浩三医師 元札幌医科大学学長)

Q3. このごろはチームで治療に当たると聞きましたが?

その通りです。集学的治療といいますが、個々の患者さんのがんの特徴・進行度合いなどから、先に話した4つの治療法をうまく組み合わせて最もその方に合った治療を選択するようになっていますし、身体機能に合わせた取り組みや退院後の生活に関する支援も行われます。
医師では、外科医、内科医、放射線診断・放射線治療医(抗がん剤治療の専門家である)腫瘍内科医、(がんの種類・悪性度の検査・診断を行う)病理医、心や体のつらさを軽減する緩和ケア医、リハビリテーション医などが参加し、診断や治療方針について検討します。また、看護師、薬剤師、管理栄養士のみならずMSW*などが、治療面だけではなく、生活面や心の支援もできる体制をとる施設も増えました。退院後の医療・療養を引き継ぐ際には、地域の在宅医療の医師や訪問看護師が加わることもあります。
*医学的な状況も踏まえ、患者さんが、地域や家庭において自立した生活を送ることができるよう、患者さんや家族のかかえる心理的・社会的な問題の解決・調整を援助する専門職 最近ではほとんどの病院に配属(当院では30年前から配備してきました)
大切なのは、4つの治療しかも最新の取り組みが出来、QOL(生活の質)にまで気を配ってくれる施設を選ぶことでしょう。手前味噌で恐縮ですが、「札幌禎心会病院」は陽子線治療まで選択できるという意味でトップクラスの治療を提供できる施設ですし、自宅に戻られても訪問診療や訪問看護も利用していただける体制を整えております。

Q4. 最先端の医療のみならず未病への取り組みもされる予定と伺いましたが・・・

健康長寿を目的とする「アンチエイジング」への取り組みが、基礎医学を研究する先生方と治療現場の先生方両方に拡がってきており、医学部の臨床教授にも積極的にかかわる先生が増えてきています。
私が、日本抗加齢医学会、日本キレーション(有害金属の治療)協会の専門医、認定医を取得しましたので、4月以降、これまでと異なる視点で市民の健康を守る取り組み「アンチエイジングドック」をはじめる予定で準備をすすめております。
筋肉・骨・血管・ホルモン・神経年齢で老化度をみて、それらの危険因子である免疫機能、代謝機能(糖化ストレスなど)、酸化ストレス、心身ストレス、生活習慣の改善を図ろうとするものですが、これまで行われてきた健康診断の枠を大きく超えて、体全体の良いバランスを重視し健康管理を行うものです。
100歳を健康で迎えられた方々の特徴がわかってきておりますが、まさにそれを実践したいと思っています。
具体的には、皆さんが普段医療機関で調べられている血液・尿検査、X線・CT・MRI等の検査とは内容は大きく異なり、老化度/老化危険因子の検査を行い、その結果から、主に運動・食事・睡眠・気持ちの持ち方など生活習慣全般にわたって指導するほか、必要に応じ点滴やサプリメントも使うことになります。

Q5. あまり聞きなれない検査もあるようですが、主に生活習慣の改善だけで「アンチエイジング」が可能になるのですか?

これまでも生活習慣が病気発症に大きくかかわることは皆さんごぞんじですが、日頃気にされている方でも一般的な運動や食事の注意を見聞きして実行することが多いはずです。しかし、重要なのは、個々人の体の状態を細かく確認して、その方に合ったオーダーメイドの取り組みをするプログラムと実践です。 ポイントは、何故そのことが必要かを検査で具体的に示して理解していただいて始めるというものです。 筋肉モリモリの体を作るための激しい運動は血管をいためることが明らかになっていますが、かといって何もしないのはもっと困ります。 最近注目されているように、腸内細菌がつくる腸内環境がエネルギー代謝に大きく影響しますので、一人ひとり構成が異なる細菌の種類まで調べて「乳酸菌のヤクルト400が良い、あるいはビフィズス菌のミルミルが良い」というような細かな指導をしようと考えています。